ペネロペカフェ

ペネロペ公式サイトへ

スペシャルインタビュー

インタビュー 第2回 コウケンテツさん Vol.2

Date:2012.08.28

 スペシャルインタビュー第2回は、料理家のコウケンテツさんのパパの姿にスポットを当てて展開しています。


 料理家として毎日を忙しく過ごしているコウケンテツさんですが、仕事柄、地方への出張なども多いそう。久しぶりに家に帰ったときの子どもの反応はどんな感じなのでしょうか。
「僕は会いたいのですが、今息子はイヤイヤ期。実は......パパイヤイヤ期なんです。出張から帰ってきたときは、最初は喜んでくれるのですが、時間が経つとイヤイヤってされます(笑)。ママと話していたら、ママをとられてと思うんでしょうね『パパいや! パパいや!』と言って部屋から出て行けって言われます。僕が料理家として働いているというところまでは認識していないと思うのですが、テレビに出ると『パパパパ!』って言いますから、それはかわいいなと思います」



家族で食卓を囲むことを心がけているコウケンテツさんは、家族や子どもをテーマにした著書もあります。子どもが食べやすいように工夫されたレシピは必見です。

 「料理家として独立したときから一緒に住んでいたのですが、その頃彼女は自分の仕事が忙しかったので、僕が家事を担当していました。今振り返っても、家事をして1日過ごすという生活はとても楽しかったです。そういうのもあって、洗濯や掃除は僕がやって、料理は一緒に作るという流れが自然にできました。ですが、結婚して子どもができたとわかったときにふたりできちんと話し合いをしたんです。子どもが生まれたら今のように仕事ができないかもという不安もありましたし、お互いの時間を少しでも作るために、なにをしてほしくて、なにをしてほしくないかということを、日々の作業を細分化して明確にしていったんです。
例えば、僕は洗濯をするのが好きなのですが、畳むのは苦手なんです。実は、上手に畳めていない洋服やタオルなどを奥さんがだまって畳み直していたんです。そのことをその話し合いのときに告げられて......。ショックな気持ちもありましたが、時間を有効に過ごすためにも、それから僕は干す係、奥さんは畳む係という役割を決めました」

 普段ならカチンとくることも、子供のためという大義名分があれば、改善することはいとわない。コウケンテツさんは、子どもが生まれる前が、夫を教育するチャンスだと言います。
「そうですね。子どもが生まれる時期に、旦那さんの教育をするのはいいと思います。大義名分といっても独りよがりになることもありますから。
例えば、ご飯を作ると言って、山ほど高い食材買い込んできて、よく分からず作って、余った食材を冷蔵庫にめちゃくちゃに入れられると嫌だったりしますよね。そうなると、せっかく料理したのに、もう作らないでと奥さんは思ってしまう。良かれと思ってやったことが、そうならないこともある。だからこそ、きちんと話し合うことが必要なんです。奥さんには僕のマネージメントをお願いしているので、仕事に関してはケンカすることもありますが、日常生活でケンカをすることは一切ありません。それはきちんと話し合いをしたからだと感じています。
よく旦那が家事を手伝ってくれない、子育てに参加してくれないという話を聞きますが、そういう人に限ってちゃんと話し合ってないケースが多いんですよ。なにをしてほしくして、なにをしてほしくないのかが分からないまま遠慮がちになってしまっているように感じます。それはとてもマイナスなことなので、夫婦で日常生活の役割分担や子育ての方針を話し合うのはオススメです」

 でも、ガチガチにルールを作ってしまうのはよくないそうです。
「僕は子育てに関する連載をしたり、イベントなどに呼んでいただくこともあるので情報は自然と入ってきますが、専門家によっていろんな意見がありますよね。3歳まではしっかりしつけないとワガママな子供になるという方もいれば、逆に3歳までは怒ってはダメという方もいる。そういう意味でも、夫婦での話し合いは大切だと思います。例えばですが、僕はそう思っていないのに奥さんは受験をさせたいと思っていたとすると、その受験の時期になって言われたらトラブルが起こると思うんです。でも事前に、ある程度の時期までの子育ての方針を話し合っておくと、そんなトラブルは回避できます。


 我が家で決めたルールはふたつです。ひとつは、ちゃんとごはんを食べておいしかったですっていう子に育てようということ。きちんと『いただきます』と『ごちそうさまでした』が言える子に。このふたつの言葉には、想いが込められると思うので。
そして、もうひとつは、僕自身が外国籍というのもあって、肌の色や人種で差別をしないということ。
このふたつを守ってくれるなら、多少やんちゃでも、勉強が苦手でもいいかなと思っています。こういったルールを夫婦間で決めると、気持ちがぶれなくなりました。

 親も、他の子どもと比べたりすることってあると思うんです。息子は早生まれなので、同級生よりも少し小さかったり、言葉を覚えるのが遅かったりしたのですが、そういうことを気にしだしたらきりがありません。でも、このふたつのルールを意識していると、きちんとご飯を食べているかなとか、ほかの子への接し方はどうかなと......子どもを見ていれば分かるようになります。子供のためであると同時に、親側の心の防波堤にもなることもあります。
 たくさんルールを決めてしまうとそれにとらわれて親自身が苦しくなるので、必要最低限のことを決めていれば問題ないと思っています」

 親になるには、自分の時間がなくなることも覚悟したほうがいいそうです。
「そうですね。自分の時間はないと思ったほうがいいと思います。僕も覚悟を決めています。といっても、子どもが生まれる前は、睡眠時間は2~3時間かなと思っていたんですけど、そんなこともなかったですけどね。今までは、無駄な時間が多かったのだと思います。なので、子どもが生まれてからは朝6時に朝ご飯、18時に夜ご飯というタイムスケジュールになったので、効率よく仕事ができるようになりました。これは子どもが生まれてとてもプラスになった大きなことですね」

 夫婦の話し合い同様、周りのパパたちとも情報交換を行っているのでしょうか。
「僕はあまりしませんね。それぞれの子育て方法があると思うので。
20年前ぐらいにフランスに旅行に行ったのですが、そのときのフランスは今と違って、個人主義の大人の国でした。今は、休日にパパがベビーカーをおしていますが、その頃は考えられなかった。日本はレストランにも子どもがいたりしますが、フランスでは夜は大人の時間。子どもたちはベビーシッターに預けて夫婦でレストランに出かけるというスタイルでした。
 それが、少子化が問題になって、子どもを生んだほうが税金が安いとか、法律が変わったんですよね。そこから子ども社会になったというか......。僕は大人なフランスに憧れがあったので、パパがベビーカーをおして公園に行っている今のフランスのパパにはとても驚きました。もちろん時代とともに子育てスタイルも変化するものだと思いますが、流行に関係なく僕は自分のルーツを大切にして子育てをしたいと考えています」
 そのルーツのひとつに食材の買出しがあるそうです。
「僕は、幼い頃に母と一緒に市場によく買い物に行っていました。その頃から、季節によって旬の食材が違うということを認識していたのです。そして、市場の大人と触れ合うことで社会勉強になっていた部分もありますし。それは、母なりの食育だったじゃないかなと。なので、僕もスーパーには息子を連れて行きます。家族みんなで食材の買出しをして、一緒に作る。母にしてもらって嬉しかったことは、息子にもしていきたいと思っています」

(1日のスケジュール)
06:00    起床
朝ご飯を作り、家族揃っていただく
07:00   仕事のメールをチェックしつつ
保育園へ行く準備
08:30   保育園に送る
09:00   撮影の準備
インタビュー取材や打ち合わせなどをこなす
10:00   撮影スタート
17:00   撮影終了
保育園へ迎えに行く
17:30   子どもと一緒にスーパーに買出し
夕飯や次の日の撮影用の食材を買う
18:30   夕食作り、家族揃っていただく
20:00   子どもタイム
一緒にお風呂に入ったり、本を読んだりしながら子どもと過ごす
21:00   子どもの就寝後、仕事タイム
レシピを考えたり、試作を作ったり、原稿校正などを行う
終わり次第就寝
 

 

「撮影がない日は、近くの公園に遊びに行ったり、子どもと外に出かけるようにしています。お弁当を作ってピクニックに行くこともあります」


Profile

コウケンテツ

料理家。韓国料理を中心に、素材の味を生かしたヘルシーなメニューに定評がある。現在は雑誌や本、テレビ、ネットコンテンツ、イベントなど多方面で活躍中。「とうがらし」「コウケンテツのキムチ料理」など著書多数。
http://www.kohkentetsu.com/